会社の経費は法人税上、事業にかかるものであれば税金も経費(損金)と認められます。
しかし、税金の中で損金不算入となるものが5つあります。
それが、法人税、地方法人税、都道府県民税、市町村民税、そして事業税。
これらの中でも扱いを整理するのが個人的に難しかった事業税について解説します、
事業に必要な税金は損金算入できる
ビジネスで生じる経費には税金も含まれます。
例えば、固定資産税、自動車税、印紙税、事業所税など。
ほかにも軽油税、宿泊税、入湯税も実務で見たことがあります。
これらは事業を営むために発生した出費なので損金算入が認められます。
しかし、事業から生じる税金なのに、損金不算入となるものがあります。
それが法人税、地方法人税、都道府県民税、市町村民税です。
※消費税は税込方式の場合PLに登場します
損金不算入の税金
法人税、地方法人税、都道府県民税、市町村民税は損金不算入になります。
なぜかを納得できれば腹落ちしやすくなりますよ!
調べた限り、2つの説が見つかりました。
①所得処分説(利益処分説)
法人税・住民税はもともと所得のうちから納付することが予定されており「利益処分的なもの」と解されるため。
②所得波動説
法人税・住民税を損金算入すると、所得金額が減少し、循環的には波動が生じる。これでは所得の変動以上に税収が年度により変動し、租税政策上好ましくないため。
杉山会計事務所様より
益金-損金=所得 損金を引いた後の数字を用いるから損金にならない。
法人税等を損金にすると税収が減るから政策として望ましくない。
裏は調べてませんが、どちらも納得感がありますね。
つまり、所得を使って計算する税金は損金不算入ということ・・・ではありません!
所得から算出される | 申告書提出年度の損金算入 | |
通常の税金 | × | ◎ |
法人税 地方法人税 都道府県民税 市町村民税 | ◎ | × |
事業税 | ◎ | ◎ |
そう、これが事業税がややこしい理由です。
別表5(2)の上でも「その他」に括られず、所得を用いて計算している。
なのに事業税だけ法人税・住民税と異なります。
事業税はどう整理すればいい?
事業税さえいなければ、下図のように簡単に整理できるものを・・・
所得から算出される | 損金算入 損金不算入 | |
通常の税金(消費税除く) | × | 損金算入 |
法人税 地方法人税 都道府県民税 市町村民税 | ◎ | 損金不算入 |
なので、この扱いが特殊な整理していきましょう。
私は「事業税は所得から計算する引当金と似た性格のもの」として整理してます。
なので、賞与引当金と性質を比較してみましょう。
別表4での扱い
・賞与引当金
賞与引当金繰入 として損金経理するが、キャッシュアウトは賞与支給日なので、損金不算入
→別表4で加算処理
・事業税
確定法人税額から算出する引当金(のようなもの)
→納税充当金として別表4の[4]で加算処理
別表5(1)での扱い
・賞与引当金
別表4で加算処理したので、5(1)にも登場
・事業税
別表4で加算処理したので、5(1)にも登場
別の言い方をすれば、未払法人税等に含まれるので納税充当金の項に登場
表5(2)での扱い
・賞与引当金
登場しない
・事業税
法人税額から計算する関係上、5(2)に登場する。
期末時点では未納のため、別表4、5(1)で要調整。
しかし、引当金(のようなもの)なので、別表4、5(1)には連動の仕方が法人税・住民税と異なる。
考察:事業税が法人税・住民税と扱いが異なる理由
法人3税と括られる法人税、住民税、事業税。
なぜ事業税だけ扱いが異なるのか?その答えを歴史に求めて考察してみました。
それぞれの税金の原型と変遷は、このようになります。
法人税 | 住民税 | 事業税 | |
原型 | 所得税 | 付加税(※1) | 営業税(※2) |
明治 | 第1種所得税 | 付加税(※1) | 営業税(※2) |
大正 | 第1種所得税 | 付加税(※1) | 営業収益税へ(※3) |
戦後 | 現在の形に | 現在の形に | 現在の形に |
※1 国税だった対し、市町村、府県が課税できる税金。
※2 商工業一般に対する課税。もとは地方税だが、国税に移管した際に外形標準課税へ
※3 利益に対する課税へ移管し、零細なものは外形標準課税の地方税へ
法人税と住民税はルーツが法人税、事業税は営業税にルーツがあります。
それが戦後のシャウプ勧告を契機に大きく変わり、現在のひな型が出来上がりました。
申告納税制度も同時期に始まりましたが、元の制度とうまく整合がつかなかったんでしょうか。
納得のいくレベルでの答えは見つかりませんでしたが、ルーツが違うから別表での扱いが違うというのは可能性がありそうです。